小売事業者がShopifyでリピート施策やCRMを強化しようとするとき、最初にぶつかる壁は「誰が何を買ったのか」を手作業で管理しきれないことです。特定商品を購入した顧客だけにフォローメールを送りたい、まとめ買い顧客だけにVIP案内を出したいと考えても、注文データを一件ずつ確認してタグを付け直す運用では、担当者の工数が際限なく膨らみ、繁忙期にはミスや漏れも増えていきます。Shopify Flowを使えば、この「特定商品を購入した顧客・注文にタグを自動付与する」処理を無料の標準機能だけで仕組み化できます。
この記事では、Shopify Flowで特定商品購入時に顧客タグや注文タグを自動付与する方法について、小売ECの実務目線で手順化して解説します。単なる機能紹介にとどまらず、なぜこの自動化が売上改善やCRM施策の土台になるのか、どこまで自社で完結でき、どこから制作会社や運用代行への相談が必要になるのかという判断軸まで、EC制作・LP改善・広告運用・CRM改善を一気通貫で見ているEC Retail Adsの視点で整理します。
特に、複数のスタッフでストアを運営している小売事業者では、「誰が」「どの顧客に」「どんな対応をしたか」が属人化しやすく、タグという共通言語を持たないままCRM施策を進めてしまうと、施策の再現性が失われがちです。Shopify Flowによるタグ自動化は、この属人化を解消し、データに基づいた意思決定をチーム全体で行うための第一歩でもあります。本記事の手順を実践すれば、専門知識がなくても当日中に運用を開始できるレベルまで落とし込んでいます。
Shopify Flowの活用やCRM施策の設計をまとめて相談したい事業者へ
タグ自動化だけを実装しても、その先のセグメント配信やリピート施策まで設計しないと成果にはつながりません。EC Retail Adsでは、小売ECの事業課題に合わせて、Shopify構築・CRM設計・広告運用・リピート施策までを一気通貫で整理し、Flowで取得したデータを実際の売上改善につなげる支援を行っています。
- この記事でわかること
- 結論:タグ自動化は「集める」だけでなく「使う」設計とセットで考える
- なぜ「商品購入トリガー」でのタグ自動化が必要なのか
- 業種別に見る活用イメージ
- Shopify Flowとは
- 特定商品を購入した顧客に自動でタグを付与する方法
- 特定商品を購入した注文に自動でタグを付与する方法
- 特定コレクション内の商品購入をトリガーにする応用パターン
- ディスカウント使用トリガーとの違いと使い分け
- Shopify Flowと他の自動化手段との違い
- 実際の運用イメージ:導入から効果検証までの流れ
- 付与したタグの活用例
- タグ自動化と組み合わせたい他のFlow活用アイデア
- メリットとデメリット
- タグ設計を成功させる3つの原則
- この施策と合わせて検討したいCRM施策
- 効果測定で見るべきKPI
- 導入前に確認しておきたい実装チェックリスト
- 運用でつまずきやすいポイント
- よくある質問
- まとめ
この記事でわかること
- Shopify Flowで特定商品購入時に顧客タグ・注文タグを自動付与する具体的な設定手順
- 特定コレクション内の商品購入をトリガーにする応用パターン
- ディスカウント使用をトリガーにするタグ付与との違いと使い分け
- 付与したタグをリピート施策・CRM・広告運用にどう活かすか
- 自社で完結できる範囲と、外部の運用代行に相談すべきタイミング
結論:タグ自動化は「集める」だけでなく「使う」設計とセットで考える
Shopify Flowで特定商品購入時にタグを自動付与すること自体は、管理画面上の設定だけで完結する比較的シンプルな作業です。しかし、小売ECの現場でこの機能が本当に効果を出すのは、付与したタグを使って「誰に」「何を」「いつ」配信するかという後工程まで設計されている場合に限られます。タグを付けるだけで満足してしまい、セグメント配信やLTV分析に活用できていないケースは非常に多く見られます。
そのため、まずは自社の商品構成の中で「購入者を特別に扱いたい商品・コレクション」を洗い出し、それぞれにどんなタグ設計とフォローアップ施策を紐づけるかを先に決めてから、Shopify Flowの設定に進むことをおすすめします。
| 判断項目 | 自社だけで進める場合 | 外部支援を入れるべき場合 |
|---|---|---|
| タグ設計 | 商品数が少なく、トリガー条件がシンプルな場合は自社で十分対応可能 | SKU数が多い、複数コレクションを跨ぐ複雑な条件が必要な場合は設計段階から相談が有効 |
| Flowレシピ作成 | 管理画面の操作に慣れていれば数十分で作成できる | 複数条件の組み合わせや例外処理が必要な場合はロジック設計の支援があると安全 |
| タグの活用 | Shopify標準のセグメント機能で簡易的な配信は可能 | メール・LINE・広告のオーディエンス連携まで含めるなら外部ツール連携の設計が必要 |
| 運用・改善 | タグ数が少なければ社内で棚卸し可能 | タグが増えすぎて形骸化している場合は整理・再設計の支援が有効 |
なぜ「商品購入トリガー」でのタグ自動化が必要なのか
小売ECでは、すべての顧客を一律に扱っていると、本来もっとも重要な顧客層への訴求が埋もれてしまいます。たとえば、高単価の主力商品を購入した顧客と、送料無料ラインを超えるためだけについで買いをした顧客とでは、その後のフォローアップの内容も頻度も変えるべきです。しかし、これを人力で判別してタグ付けしようとすると、注文件数が増えるほど現実的ではなくなります。
Shopify Flowを使った商品購入トリガーのタグ自動化は、こうした「本来分けるべきだが、人力では分けきれない」顧客・注文の仕分けを、注文が発生した瞬間に自動で行ってくれる点に価値があります。広告費をかけて集めた新規顧客も、リピート化させるための最初のフォローが遅れれば機会損失になります。タグによる自動仕分けは、この初動を早める仕組みとして機能します。
一般的に、EC事業では新規顧客獲得のコストはリピート顧客の再購入を促すコストの何倍にもなると言われています。広告経由で獲得した新規顧客のうち、何もフォローをしなければ多くはそのまま一度きりの購入で離脱してしまいます。だからこそ、「どの顧客が」「どの商品を」「どんな文脈で」購入したのかを注文発生の瞬間に自動で記録し、その後のコミュニケーションに活かせる状態を作っておくことが、広告費の投資対効果を高める上でも重要になります。タグによる自動仕分けは、この一連の顧客理解プロセスを人手に頼らず継続的に回すための土台です。
業種別に見る活用イメージ
Shopify Flowの商品購入トリガーは業種を問わず活用できますが、扱う商材によって「何を条件にするか」「タグをどう使うか」の勘所が異なります。ここでは小売ECでよくある業種を例に、活用イメージを紹介します。
アパレル・ファッション
シーズン商品や新作コレクションの購入者にタグを付与し、次シーズンの先行案内やスタイリング提案のメールを配信する使い方が有効です。特定ブランドラインの購入者だけに向けた別注商品の先行告知にも応用できます。
食品・消耗品
定期的に消費される商品の購入者にタグを付与し、平均的な消費サイクルに合わせて買い替え時期にリマインドメールを送ることで、サブスクリプションに頼らずにリピート購入を促進できます。
雑貨・インテリア
高単価な主力商品の購入者と、送料無料ライン到達のためのついで買い顧客を区別してタグ付けすることで、優良顧客に絞ったロイヤリティ施策の精度を高められます。
Shopify Flowとは
Shopify Flowは、Shopifyが標準で提供している自動化(ワークフロー)アプリです。Shopifyベーシックプラン以上であれば追加費用なく利用でき、注文・顧客・在庫・商品などのイベントをトリガーにして、タグ付与やメール送信、Slack通知といったアクションを自動実行できます。プログラミングの知識がなくても、管理画面上で「トリガー」「条件」「アクション」を組み合わせるだけでレシピ(ワークフロー)を作成できるのが特徴です。
- Shopifyベーシックプラン以上で無料利用可能
- ノーコードでワークフローを作成できる
- 注文作成・顧客登録・在庫変動など多様なイベントをトリガーにできる
- タグ付与のほか、通知・メール送信・下書き注文作成なども自動化できる
特定商品を購入した顧客に自動でタグを付与する方法
まずは、特定商品を購入した顧客に対して自動的に顧客タグを付与する設定手順を解説します。この設定を行うと、対象商品を一度でも購入した顧客を、管理画面の顧客一覧やセグメント機能で瞬時に絞り込めるようになります。
ステップ1:ワークフローを新規作成する
Shopify管理画面から「アプリ」→「Shopify Flow」を開き、「ワークフローを作成」をクリックします。ここから新しい自動化のロジックを組み立てていきます。
ステップ2:トリガーを設定する
トリガーには「Order created(注文が作成された)」を選択します。これにより、新規注文が発生するたびにこのワークフローが実行されるようになります。
ステップ3:条件を設定する
次に条件を追加します。「Order」の中から「LineItems_item」→「name」を選び、対象としたい商品名を「次のものを含む」で指定します。商品名の表記ゆれ(半角・全角、型番の有無など)に注意し、実際の商品名と完全に一致するよう確認してください。複数商品を対象にしたい場合は、条件をOR(いずれか)でつなげることも可能です。
ステップ4:アクションを設定する
条件を満たした場合のアクションとして「Add customer tags(顧客タグを追加)」を選択し、付与したいタグ名を入力します。タグ名は後々の運用を見据えて「購入商品名」「用途」「取得日」などが一目でわかる命名規則にしておくと、タグが増えても管理しやすくなります。
ステップ5:ワークフローを保存してオンにする
ワークフロー名を設定して保存し、最後に「ワークフローをオン」に切り替えれば設定は完了です。テスト注文を行い、対象顧客のページでタグが正しく付与されているかを必ず確認しましょう。テスト注文はキャンセルしてもタグの付与履歴は残るため、本番運用前に必ず動作確認を行うことをおすすめします。
動作確認時によくあるつまずき
設定後にテストしてもタグが付与されない場合、多くは条件設定の商品名が実際の商品名と完全一致していないことが原因です。全角・半角の違いや、商品名の末尾に型番やカラー名が付いている場合など、細かな表記差異で条件にヒットしないケースが頻発します。「次のものを含む」条件を使い、商品名の一部(共通するキーワード)で指定すると表記ゆれの影響を受けにくくなります。また、ワークフローが「オン」になっているか、公開後に一度画面を再読み込みして確認することも忘れないようにしましょう。
特定商品を購入した注文に自動でタグを付与する方法
顧客単位ではなく、注文単位でタグを管理したい場合は「Add order tags(注文タグを追加)」を使います。基本の手順は顧客タグの場合とほぼ同じで、トリガーと条件は共通のまま、アクションだけを切り替えます。
顧客タグと注文タグの使い分け
顧客タグは「その顧客が過去に何を買ったか」を蓄積していくのに向いており、CRMやセグメント配信との相性が良い設定です。一方、注文タグは「この注文にどんな処理が必要か」を示すのに向いており、出荷指示の分岐やスタッフへの申し送りなど、受注管理・フルフィルメントの現場運用と相性が良い設定です。目的に応じてどちらか一方、あるいは両方を組み合わせて運用します。
特定コレクション内の商品購入をトリガーにする応用パターン
対象商品が多い場合、商品名を一つずつ条件に指定するのは非現実的です。この場合は、条件に「LineItems_item」→「product」→「collections」を使い、対象コレクションのハンドル(URLの一部となる識別子)を指定することで、そのコレクションに含まれるすべての商品購入をまとめてトリガーにできます。新商品をコレクションに追加するだけで自動的にタグ付与の対象になるため、運用の手間を最小限に抑えられます。
ディスカウント使用トリガーとの違いと使い分け
Shopify Flowのタグ自動化には、本記事で解説した「商品購入」をトリガーにする方法のほかに、「特定のディスカウントコードが使用されたこと」をトリガーにする方法もあります。両者は似ているようで、実務上の使いどころが異なります。
- 商品購入トリガー:特定の商品そのものに関心がある顧客を特定したいとき(例:ハイブランド商品購入者、消耗品リピーター候補の抽出)
- ディスカウント使用トリガー:特定のキャンペーンや流入経路に反応した顧客を特定したいとき(例:SNS限定クーポン利用者、インフルエンサー経由の顧客抽出)
どちらか一方だけを使うのではなく、商品軸とキャンペーン軸の両方でタグを設計しておくと、後からデータを掛け合わせて分析する際の解像度が大きく上がります。
| 比較項目 | 商品購入トリガー | ディスカウント使用トリガー |
|---|---|---|
| 主な目的 | 商品そのものへの関心・購買行動の把握 | キャンペーン・流入経路への反応の把握 |
| 向いている施策 | クロスセル、消耗品リピート、VIP抽出 | キャンペーン効果測定、流入経路別のLTV比較 |
| 条件設定の起点 | LineItems_item(商品名・コレクション) | Discount code(クーポンコード名) |
| データの持続性 | 商品ラインナップが変わらない限り継続利用しやすい | キャンペーン終了後は条件の見直しが必要になりやすい |
Shopify Flowと他の自動化手段との違い
タグの自動付与は、Shopify Flow以外にも一部のサードパーティアプリで実現できます。しかし、多くのタグ自動化専用アプリは月額課金制であり、既にShopify Flowが無料で使える環境であれば、まずは標準機能で要件を満たせないかを検討するのが合理的です。一方で、条件分岐が非常に複雑になる場合や、外部システム(基幹システム・在庫管理システムなど)とのリアルタイム連携が必要な場合は、Shopify Flowの範囲を超えるため、専用アプリやAPI連携による実装を検討する必要があります。自社の要件がどちらに該当するかを見極めることが、無駄なアプリ課金を避け、運用をシンプルに保つポイントです。
実際の運用イメージ:導入から効果検証までの流れ
Shopify Flowによるタグ自動化を初めて導入する場合、以下のような流れで進めると迷わずに運用を軌道に乗せられます。
1週目:対象商品とタグ設計の洗い出し
まず、直近半年〜1年の売上データを確認し、リピート施策の効果が見込める商品・コレクションを3〜5個程度に絞り込みます。同時に、タグの命名ルールを決め、社内で共有できるドキュメントにまとめておきます。
2週目:ワークフローの作成とテスト
洗い出した対象ごとにワークフローを作成し、テスト注文で動作確認を行います。この段階で、実際の注文データを使ったシミュレーションも合わせて行うと、条件設定の漏れに早く気づけます。
3週目以降:タグを活用したフォロー施策の実施
タグが正しく蓄積され始めたら、対象顧客へのフォローメールやLINE配信、広告オーディエンスへの活用を開始します。配信後は開封率・クリック率・再購入率を記録し、次の施策改善に活かします。
1〜3ヶ月後:効果検証とタグ設計の見直し
一定期間運用したら、タグ対象顧客とそれ以外の顧客とで再購入率やLTVに差が出ているかを検証します。効果が薄い場合は、タグの条件設定や、その後のフォロー施策の内容自体を見直す必要があります。
付与したタグの活用例
VIP顧客・優良顧客の抽出
高単価商品や定番人気商品の購入者にタグを付与しておけば、Shopify標準のセグメント機能や連携先のCRM・メール配信ツールで、そのタグを持つ顧客だけに向けた限定オファーやVIP案内を配信できます。
リピート施策・クロスセルへの応用
特定商品を購入した顧客に対して、関連商品や消耗品の買い替えタイミングに合わせたフォローメールを送ることで、リピート購入を促進できます。定期的に消費される商材を扱う小売事業者ほど効果を実感しやすい施策です。
広告運用へのデータ連携
タグで抽出した顧客リストは、Meta広告やGoogle広告のカスタムオーディエンスの元データとしても活用できます。既存顧客と似た属性の新規顧客を狙う類似オーディエンス配信の精度向上にもつながります。
タグ自動化と組み合わせたい他のFlow活用アイデア
商品購入トリガーのタグ自動化に慣れてきたら、Shopify Flowでは以下のような周辺施策も同じ仕組みで実装できます。あわせて検討することで、自動化の効果をさらに広げられます。
- 初回購入の顧客に「新規顧客」タグを付与し、初回限定フォローメールの配信対象にする
- 一定金額以上を購入した注文に「高額注文」タグを付与し、出荷時の梱包・同梱物を変える運用フラグとして使う
- 在庫が少なくなった商品にタグを付与し、Slack通知で発注担当者にアラートを飛ばす
- 返品・キャンセルが発生した注文にタグを付与し、カスタマーサポートの優先対応リストに自動反映する
これらはいずれも、今回解説した「トリガー・条件・アクション」の組み合わせという基本構造は同じです。一つの型を覚えてしまえば、応用範囲は業務全体に広げていくことができます。
メリットとデメリット
メリット
- Shopify標準機能のため追加費用がかからない:ベーシックプラン以上であれば、月額課金のアプリを追加することなく運用を開始できます。
- 手作業でのタグ付けによる漏れ・ミスを防止できる:注文件数が増えても、条件に合致する限り確実に処理されるため、繁忙期のヒューマンエラーを減らせます。
- 注文発生と同時に処理されるため、フォローアップの初動を早められる:購入直後のタイミングでタグが付与されるため、鮮度の高いフォロー施策を打てます。
- ノーコードで設定でき、専門知識がなくても運用開始できる:エンジニアに依頼せずとも、EC担当者自身で完結できる設定です。
デメリット・注意点
- 条件設定を誤ると、意図しない顧客・注文にタグが付いてしまう:商品名の指定範囲が広すぎると、関係のない商品にまでヒットすることがあります。
- 商品名の変更やリニューアルがあると、条件の見直しが漏れやすい:商品情報を更新する際は、関連するワークフローの条件も同時に見直す運用ルールが必要です。
- タグが増えすぎると、どのタグが何のために存在するのか社内で分からなくなる:命名ルールとドキュメント管理を最初から徹底することが重要です。
- タグを付与するだけで活用フローが設計されていないと、施策として機能しない:配信・分析までの一連の流れを事前に設計しておく必要があります。
タグ設計を成功させる3つの原則
原則1:目的から逆算してタグを作る
「なんとなく便利そうだから」という理由でタグを増やしていくと、数ヶ月後には使われないタグばかりが残ります。「このタグを使って、いつ、誰に、何を配信するのか」を先に決めてから、その目的を達成するために必要なタグだけを設計するようにしましょう。目的が明確なタグほど、後から効果測定もしやすくなります。
原則2:命名ルールを統一する
タグの命名がスタッフごとにバラバラだと、同じ意味のタグが複数存在してしまい、セグメント配信の精度が落ちます。「種別_詳細_期間」のように、社内で統一されたフォーマットを最初に決め、ドキュメント化して共有しておくことが、長期的な運用のしやすさにつながります。
原則3:定期的に棚卸しする
キャンペーンやシーズンごとにタグを追加していくと、使われなくなったタグが蓄積していきます。四半期に一度など、定期的にタグの利用状況を確認し、使われていないタグやワークフローを整理する運用ルールを設けることで、タグ体系を健全に保てます。
この施策と合わせて検討したいCRM施策
Shopify Flowでのタグ自動化は、それ単体で完結する施策ではなく、他のCRM施策と組み合わせることで真価を発揮します。たとえば、タグで抽出したVIP顧客に向けた会員ランク制度の導入、リピート購入を促すポイント・ロイヤリティプログラムとの連携、LINE公式アカウントを使ったセグメント配信などが代表的な組み合わせです。自社のリソースだけでこれらを同時に設計・運用するのが難しい場合は、CRM設計の経験がある制作会社や運用代行に相談し、優先順位をつけながら段階的に導入していくことをおすすめします。
効果測定で見るべきKPI
タグ自動化を導入したら、以下のような指標を定点観測することで、施策の効果を客観的に判断できます。
- タグ付与対象顧客の再購入率(タグなし顧客との比較)
- タグ起点で配信したメール・LINEの開封率・クリック率
- タグ対象顧客の平均購入間隔(フォロー施策実施前後の変化)
- タグ対象顧客のLTV(顧客生涯価値)の推移
これらの数値は、Shopify標準の分析画面だけでは追いきれない部分もあるため、GA4や外部のCRM・BIツールと組み合わせて可視化すると、施策の意思決定がしやすくなります。
導入前に確認しておきたい実装チェックリスト
- 対象にしたい商品・コレクションが明確になっているか
- 付与するタグの命名ルール(例:「購入_商品名_年月」のような統一フォーマット)を決めているか
- タグ付与後にどんな配信・施策を行うか、後工程まで設計できているか
- 既存のタグ体系と重複・矛盾が生じないか確認したか
- テスト注文での動作確認フローを決めているか
- タグを定期的に棚卸しする担当者・頻度を決めているか
運用でつまずきやすいポイント
Shopify Flowの設定自体は難しくありませんが、実務では次のようなつまずきが起こりがちです。まず、商品名の表記ゆれです。商品名をリニューアルした際に旧名称のままの条件が残っていると、新しい商品では正しくタグが付与されません。次に、複数のワークフローが同時に走ることによる競合です。同じ注文に対して複数のタグ付与ロジックが動く場合、意図した順序で処理されているかを必ず確認する必要があります。最後に、タグの棚卸し不足です。キャンペーンごとにタグを増やし続けると、半年後には使われていないタグだらけになり、セグメント配信の精度がかえって落ちてしまいます。四半期に一度など、タグの棚卸しルールを決めておくことをおすすめします。
よくある失敗事例
1つ目は、担当者の異動・退職によってワークフローの存在自体が忘れられ、誰もメンテナンスしないまま放置されるケースです。ワークフロー一覧と設計意図をドキュメント化し、属人化を防ぐことが重要です。2つ目は、タグを付与することだけが目的化してしまい、実際の配信施策やCRM活用にまで手が回らないケースです。タグ設計と同時に、活用する施策のロードマップまで決めておく必要があります。3つ目は、季節商品やスポット商品向けに作ったワークフローを、シーズン終了後もオフにし忘れて放置し、翌シーズンに条件が古いまま残ってしまうケースです。ワークフローにも棚卸しのサイクルを設けることをおすすめします。
よくある質問
Q. Shopify Flowは無料で使えますか?
A. Shopifyベーシックプラン以上であれば、Shopify Flowは追加費用なく利用できます。プランのアップグレードや別途アプリの契約は不要です。
Q. すでに顧客タグを手作業で運用しています。移行はできますか?
A. 既存のタグ体系を維持したまま、今後の新規注文分だけをFlowで自動化することが可能です。過去分の注文に一括でタグを付与したい場合は、CSVエクスポート・インポートや別途ツールでの一括処理が必要になるケースもあります。
Q. 複数の条件を組み合わせることはできますか?
A. 可能です。「商品Aを購入」かつ「初回購入」といったAND条件や、複数商品をOR条件でつなげる設定にも対応しています。条件が複雑になるほどテストを丁寧に行うことが重要です。
Q. タグ付与のタイミングはどれくらいですか?
A. 通常、注文作成のイベントとほぼ同時にワークフローが実行されるため、タイムラグはごくわずかです。決済完了直後にはタグが反映されていると考えて問題ありません。
Q. 自社に合ったタグ設計が分からない場合はどうすればよいですか?
A. 商品構成や既存の顧客データを踏まえた設計が必要になるため、まずは現状の商品ラインナップとリピート施策の目的を整理した上で、EC運用に詳しい制作会社や運用代行に相談することをおすすめします。
Q. ワークフローの数に上限はありますか?
A. Shopify Flowで作成できるワークフロー数には一定の上限がありますが、一般的な小売事業者の運用であれば上限に達することはまれです。上限に近づいた場合は、似た条件のワークフローを一つに統合することで整理できます。
Q. タグを付与した後、間違いに気づいた場合は修正できますか?
A. 顧客ページ・注文ページから手動でタグを削除・修正できます。誤ったタグが大量に付与されてしまった場合は、CSVエクスポートで対象を洗い出し、一括で修正する方法も検討してください。
Q. Shopify FlowとLINE公式アカウントやメール配信ツールは連携できますか?
A. Shopify Flow自体に直接の配信機能はありませんが、付与したタグを条件にして外部のLINE配信ツールやメール配信ツール側でセグメント配信を組むことで、タグを起点にしたコミュニケーションが可能になります。連携方法はツールによって異なるため、事前に対応可否を確認してください。
まとめ
Shopify Flowを使った特定商品購入時のタグ自動付与は、無料の標準機能だけで実現できる、小売ECにとって費用対効果の高い自動化施策です。顧客タグと注文タグを目的に応じて使い分け、コレクション単位の応用や、ディスカウントトリガーとの組み合わせまで設計しておくことで、単なる作業効率化にとどまらず、リピート施策・広告運用・CRM改善の土台となるデータ基盤を構築できます。
一方で、タグ設計や活用フローの設計を誤ると、せっかく自動化してもデータが活かされないまま形骸化してしまうケースも少なくありません。「目的から逆算してタグを作る」「命名ルールを統一する」「定期的に棚卸しする」という3つの原則を守りながら、商品購入トリガーとディスカウント使用トリガーを使い分け、業種特性に合わせた活用シナリオを描くことが、Shopify Flowを使いこなす上での近道です。
自社の商品構成やリピート施策の目的整理から、Shopify Flowの設定、その先のCRM・広告運用への連携まで一気通貫で相談したい場合は、EC制作・LP改善・広告運用・CRM改善をワンストップで支援するEC Retail Adsまでお気軽にご相談ください。現状の課題をヒアリングした上で、どこから着手すべきかを一緒に整理します。


コメント