「今はBtoCの通販サイトをShopifyで運営しているけれど、法人からの大口注文の問い合わせが増えてきた。掛け売り(請求書払い)に対応したいし、取引先ごとに卸価格も設定したい。でも、そのためにゼロからBtoB向けのシステムを別に作るのはコストも時間もかかりすぎる……」
結論から言うと、Shopifyには「Shopify B2B」というBtoB向けの標準機能が備わっており、2026年4月以降はすべての料金プランで利用できるようになりました。既存のBtoC向けShopifyストアに追加設定を行うだけで、会社(法人)単位の顧客管理、取引先ごとの個別価格、数量ルール、請求書払いなどのBtoB特有の商習慣にワンストアで対応できます。ただし「何でもできる魔法の機能」ではなく、プランによる制約や、バリアント単位の価格設定ができないといった実務上の落とし穴も存在します。自社の卸売・法人営業の実態に合わせて、Shopify B2B機能をそのまま使うべきか、専用アプリで拡張すべきか、あるいは別ストアを構築すべきかを見極める必要があります。
本記事は約2万字のボリュームで、Shopify B2Bの機能全体像、プラン別の対応範囲、BtoCとBtoBを併売する際の3つのパターン、導入メリットと注意点、そしてShopify B2B機能以外の代替策までを、EC制作・EC広告の現場で数多くの小売事業者を支援してきた視点から徹底的に解説します。「自社はどの方法でBtoB展開をすべきか」を判断できる材料を、この記事一本で揃えられるように構成しています。なお、地域ごと・カタログ単位の具体的な設定手順(Shopifyマーケットのカタログ機能の使い方)については、別記事で詳しく扱っていますので、本記事の後半でご案内します。
- この記事でわかること
- なぜ今「Shopify B2B」でBtoB向けECを検討すべきなのか
- Shopify B2B機能の全体像|何ができるのか
- プラン別にできること・できないこと
- BtoCとBtoBを併売する3つのパターン
- Shopify B2B導入のメリット
- Shopify B2B導入時の注意点・落とし穴
- Shopify B2B機能以外の代替策
- Shopify B2B導入までの進め方
- Shopify B2B導入を成功させるための視点
- よくある質問
- Shopify B2B機能はすべてのプランで無料で使えますか?
- 既存のBtoC向けShopifyストアに、後からB2B機能を追加できますか?
- Shopify B2Bの導入設計、専門家と一緒に進めませんか
- Shopify B2Bとアプリを使ったBtoB対応は、どちらを選べばよいですか?
- BtoBの取引先が多い場合、別ストアを作った方がよいのでしょうか?
- 請求書払い(掛け売り)に対応する際、与信管理はどうすればよいですか?
- 海外の法人取引先にも同じ仕組みで対応できますか?
- Shopify B2Bの導入は自社の担当者だけで進められますか?
- Shopify B2B導入後、どのような指標で効果を測ればよいですか?
- 既存のFAX・電話注文の取引先を、無理にオンラインへ移行させる必要はありますか?
- まとめ
この記事でわかること
- Shopify B2B機能の全体像:会社(Company)管理、個別価格、数量ルール、請求書払いなど、標準機能でできることを網羅的に把握できます。
- プラン別の対応範囲の違い:Basic・Grow・Advanced・Plusでどこまで使えるかが明確になり、自社に必要なプラン選定の判断軸が持てます。
- BtoCとBtoBを併売する3つのパターン:同一ストア運用、セカンドストア構築、別チャネル運営のメリット・デメリットを比較検討できます。
- 導入のメリットと注意すべき落とし穴:業務効率化や大口顧客の囲い込みといった効果と、バリアント単位の価格設定不可などの制約を事前に把握できます。
- Shopify B2B機能以外の代替策:専用アプリの活用や別ストア構築など、標準機能だけに頼らない選択肢を比較検討できます。
- 導入までの実践的な進め方:要件整理から公開までの具体的なステップと、社内体制づくりのポイントが把握できます。
なぜ今「Shopify B2B」でBtoB向けECを検討すべきなのか
これまで多くの小売事業者にとって、BtoC(消費者向け)とBtoB(法人向け)のECは「別物」として扱われてきました。BtoB取引には掛け売り、数量割引、取引先ごとの専用価格など、BtoCの通販サイトにはない独自の商習慣が数多く存在するためです。そのため「法人向けの卸売は電話やFAX、メールでの受発注」「一般消費者向けの通販はShopifyやその他のカートシステム」という形で、業務が完全に分断されている会社は今も少なくありません。
しかし、この状況はここ数年で大きく変わりつつあります。BtoBの取引先企業側にも「担当者の在宅勤務が増え、FAXでの受発注は非効率」「深夜や休日でも発注したい」「過去の注文履歴を自分で確認したい」といったニーズが強まっており、BtoC向けのECサイトと同じような使い勝手をBtoBの受発注にも求める流れが加速しています。こうした背景を受けて、ShopifyはBtoC向けストアの延長線上でBtoB取引にも対応できる「Shopify B2B」という機能を整備し、2026年4月にはすべての料金プランで利用できる形に開放しました。これにより、これまでPlusプランなどの上位プラン契約者しか本格的に使えなかったBtoB機能が、中堅・中小規模の小売事業者にとっても現実的な選択肢になったのです。
BtoBとBtoCでは何が違うのか
Shopify B2Bの機能を理解する前提として、まずBtoBとBtoCの取引の違いを整理しておきましょう。この違いこそが、Shopify B2Bに搭載されている個々の機能の「存在意義」につながっています。
| 比較項目 | BtoC(一般消費者向け) | BtoB(法人・卸売向け) |
|---|---|---|
| 購入者 | 個人(消費者) | 企業・組織(複数の担当者が関与することも多い) |
| 注文単位・数量 | 1点〜少量が中心 | まとめ買い・大口注文が中心 |
| 価格設定 | 全顧客共通の定価 | 取引先ごとの契約価格・卸価格 |
| 支払い方法 | クレジットカード、代引き、後払いアプリなど | 請求書払い(掛け売り)、銀行振込、月末締め翌月払いなど |
| 意思決定プロセス | 個人が即断即決することが多い | 担当者・決裁者など複数人が関与し検討期間が長い |
| 取引継続性 | 単発購入も多い | 継続的な取引関係が前提 |
| 必要な機能 | カート、決済、配送管理など標準的なEC機能 | 見積り、掛け売り、数量割引、複数拠点管理、再注文機能など |
このようにBtoBの取引には、BtoCの標準的なEC機能だけではカバーしきれない要素が数多くあります。これらを個別に開発しようとすると本来は相応の予算とシステム開発期間が必要になりますが、Shopify B2Bはこうしたニーズの多くを標準機能としてあらかじめ用意している点に大きな価値があります。
ShopifyがB2B機能を全プランに開放した意味
従来、ShopifyのB2B機能は主に大企業向けの上位プラン(Plus)で提供されており、月額数十万円規模の契約が前提でした。中堅・中小の小売事業者にとっては「BtoBに参入したくても、Shopifyの標準機能では現実的なコストで実現できない」という状態が長く続いていたのです。しかし全プランへの開放によって、通常のBasic・Grow・Advancedプランでも会社管理や数量別価格といった基本的なB2B機能が使えるようになりました。これは、これまで卸売・法人営業を「アナログな手作業」で回してきた中小規模の事業者にとって、業務のデジタル化とEC化を一気に進められる大きなチャンスといえます。
業種によってBtoBの商習慣は大きく異なる
一口に「BtoB」と言っても、業種によって求められる機能の優先順位はまったく異なります。アパレルや雑貨の卸売であれば、シーズンごとの新作カタログを取引先ごとに出し分けたい、色・サイズのバリエーションが多く単品ごとの発注数量を細かく制御したいというニーズが強くなります。食品・飲料の卸売であれば、賞味期限や最小ロット、定期発注(サブスクリプション的な継続発注)への対応が重要になりますし、工業資材や部品のBtoB取引であれば、見積り交渉を経てから正式発注に進むフロー、そして与信管理に基づいた掛け売りの可否判断がボトルネックになりがちです。Shopify B2Bはこれらすべてを完全にカバーする万能ツールではなく、あくまで「土台」を提供するものだと理解しておくと、導入後の期待値のズレを防げます。
Shopify B2B機能の全体像|何ができるのか
Shopify B2Bと一口に言っても、その中身は複数の機能の集合体です。ここでは、実際に法人向けECを設計する際に必ず検討することになる主要機能を、カテゴリー別に整理して解説します。
会社(Company)とロケーションの管理
Shopify B2Bの中核となるのが「会社(Company)」という概念です。BtoCのShopifyでは「顧客」は個人単位で管理されますが、Shopify B2Bでは顧客を「会社」という単位でまとめて管理できます。1つの会社に対して複数の担当者(購入者)を紐づけたり、本社・支社・工場といった複数の「ロケーション(拠点)」を登録し、それぞれに異なる配送先・請求先・価格設定を割り当てたりすることが可能です。
これにより、たとえば「同じ取引先企業でも、本社は掛け売り、地方支社は前払い」「拠点ごとに異なる商品カタログを見せる」といった、実際の商習慣に即したきめ細かい運用ができます。担当者が退職・異動した場合も、会社アカウントに新しい担当者を追加するだけで取引履歴や価格設定を引き継げるため、属人化を防げる点も実務上のメリットです。
取引先ごとの個別価格設定・数量ルール
BtoB取引の要とも言えるのが価格設定の柔軟性です。Shopify B2Bでは、会社(取引先)ごとに商品の販売価格を個別に設定できるほか、「10個以上購入で単価を下げる」といった数量に応じた段階的な割引(ボリュームディスカウント)も設定可能です。一般消費者向けの通常価格とは別に、法人向けの専用価格帯を用意できるため、同一ストア内でBtoCとBtoBの価格をきれいに使い分けることができます。
また、最小注文数量(MOQ)や、注文数量の増分単位(たとえば「6個単位でのみ注文可能」など)を商品ごとに設定することもできます。卸売業では「バラ売りは受け付けない」「ケース単位でしか出荷しない」といった商習慣が一般的ですが、こうした条件をストア側であらかじめ制御できるのは、受発注の手間とミスを大きく減らすポイントです。
支払い条件(請求書払い・後払い)への対応
BtoB取引で欠かせないのが「掛け売り」、つまり商品受領後にまとめて代金を支払う請求書払いへの対応です。Shopify B2Bでは、会社ごとに支払い条件(例:Net 30=納品後30日以内に支払いなど)を設定し、請求書ベースでの取引を標準機能の範囲内で運用できます。支払い期日が近づくとリマインダーを自動送信する機能もあり、督促業務の手間を軽減できます。
加えて、クレジットカード決済や銀行振込など複数の決済方法を会社ごとに使い分けることも可能です。「大口の優良取引先には請求書払いを許可し、新規取引先には前払いのみを求める」といった与信管理に近い運用も、設定次第で実現できます。
過去注文履歴からの再注文・見積り機能
法人の購買担当者にとって、「前回と同じものを、同じ数量で、また注文したい」というニーズは非常に多く発生します。Shopify B2Bでは、過去の注文履歴をワンクリックで呼び出し、そのまま再注文できる機能が用意されています。これにより、FAXや電話で毎回同じ商品リストを伝える手間がなくなり、担当者の作業負荷を大きく下げられます。あわせて、見積り依頼(RFQ)に近いフローを構築できるアプリと連携させることで、正式発注前の価格交渉プロセスをオンライン化することも可能です。
BtoB専用テーマとShopify Flowによる業務自動化
ShopifyにはBtoB取引向けに設計された専用テーマも用意されており、法人の購買担当者が発注に必要な情報(在庫数、単価、数量、再注文ボタンなど)にすばやくアクセスできるレイアウトを標準で組み込むことができます。BtoC向けのビジュアル訴求を重視したテーマとは異なり、BtoB専用テーマは「効率よく大量に発注できること」に重点を置いた設計になっている点が特徴です。
さらに、Shopify Flowと呼ばれる自動化の仕組みと組み合わせることで、「一定額以上の注文が入ったら社内の承認者に通知する」「特定の取引先からの注文には自動でタグを付与する」「支払い期日を過ぎた注文があれば担当者にアラートを送る」といった業務フローを、ノーコードに近い形で自動化できます。BtoBは受発注の件数こそBtoCより少ない一方、1件あたりの業務プロセスが複雑になりがちです。この複雑な業務プロセスをどこまで自動化できるかが、BtoB向けEC運用の生産性を大きく左右します。
プラン別にできること・できないこと
2026年4月にShopify B2Bが全プランへ開放されたとはいえ、すべての機能がどのプランでも同じように使えるわけではありません。ここを正しく理解しておかないと、「導入してから、必要な機能が実は上位プラン限定だった」という事態になりかねません。
全プラン共通で使える基本機能
Basic・Grow・Advanced・Plusのいずれのプランでも、会社(Company)とロケーションの管理、数量ルール、数量別の価格設定、支払い条件の基本設定、支払いリマインダーの送信といった、BtoB取引の土台となる機能は共通して利用できます。中小規模の卸売事業であれば、この共通機能だけでも十分にBtoB向けECをスタートできるケースが多いというのが実務上の実感です。
Plusプラン限定の高度な機能
一方で、より大規模・複雑なBtoB運用を想定した機能の一部は、依然として上位のPlusプランでのみ提供されています。代表的なものとしては、B2B専用カタログの無制限割り当て(取引先セグメントごとに見せる商品ラインナップを細かく出し分ける機能)、注文時のデポジット(内金・手付金)要件の設定、そして注文金額を分割して決済する「一部決済」やフルフィルメントに連動した決済機能などが挙げられます。
| 機能 | Basic/Grow/Advanced | Plus |
|---|---|---|
| 会社・ロケーション管理 | ○ 利用可能 | ○ 利用可能 |
| 数量ルール・数量別価格 | ○ 利用可能 | ○ 利用可能 |
| 支払い条件・支払いリマインダー | ○ 利用可能 | ○ 利用可能 |
| 会社ごとの個別価格設定 | ○ 利用可能 | ○ 利用可能 |
| B2Bカタログの無制限割り当て | △ 制限あり | ○ 利用可能 |
| デポジット(内金)要件の設定 | × 非対応 | ○ 利用可能 |
| 一部決済・分割決済 | × 非対応 | ○ 利用可能 |
| 高度なワークフロー自動化(Shopify Flow連携の一部) | △ 制限あり | ○ 利用可能 |
なお、機能の対応範囲はShopify側のアップデートで随時変更される可能性があるため、契約前には必ずShopify公式のプラン比較ページで最新情報を確認することをおすすめします。本記事はあくまで機能を検討する際の目安として活用してください。
自社に必要なプランをどう見極めるか
プラン選定の際に立てるべき問いはシンプルです。「取引先セグメントごとに、見せる商品ラインナップそのものを細かく分けたいか」「注文時にデポジットを求める商習慣があるか」「大口注文を分割決済させたいか」。これらのいずれかに強くYesと答えるのであればPlusプランを検討する価値がありますが、多くの中堅・中小の卸売事業では、まずは共通機能の範囲でBtoB向けECを立ち上げ、取引が拡大してから上位プランへの移行を検討するというステップを踏む方が、投資対効果の観点で堅実です。
Shopify B2B導入にかかる費用感とスケジュール
Shopify B2Bの導入を検討する上で、多くの事業者が気になるのが「実際にいくら、どのくらいの期間がかかるのか」という点です。ここでは、あくまで目安として費用の構成要素とスケジュール感を整理します。実際の金額は取扱商品数、既存ストアの複雑さ、必要なカスタマイズの範囲によって大きく変動するため、正式な見積りは個別に確認することをおすすめします。
費用の構成要素
Shopify B2B導入の費用は、大きく分けて「Shopifyの月額プラン費用」「B2B機能の設定・テーマ調整にかかる制作費用」「必要に応じた専用アプリの月額利用料」の3つで構成されます。標準機能の範囲内で完結させる場合は制作費用を比較的抑えられますが、BtoB専用の導線設計やデザインカスタマイズを行う場合は、その分の制作工数が加算されます。それぞれの目安は次の通りです。
- Shopify月額プラン:契約プランにより変動しますが、多くの場合はBasic〜Advancedの範囲で十分に対応できます。
- B2B機能設定・基本導線調整費用:会社アカウント設計、価格表設定、テーマ調整までを含めて数十万円規模が目安です。
- BtoB専用テーマ・UI設計費用:既存ストアの複雑さや要件の多さに応じて、案件ごとに大きく変動します。
- 専用アプリ利用料:価格設定や注文制限などの機能追加内容に応じて、月額数千円〜数万円程度が目安です。
導入スケジュールの目安
要件定義から本番公開までの標準的な期間は、標準機能中心のシンプルな構成であれば1〜2か月程度、BtoB専用テーマの作り込みや複数の専用アプリ連携を伴う場合は2〜4か月程度を見込んでおくとよいでしょう。特に時間がかかりやすいのは、既存の卸売先企業との調整(掛け売り条件の確認、担当者への説明、初回発注のサポート体制づくり)であり、システム構築そのものよりも、こうした社内外の合意形成に時間がかかるケースが実務上は多く見られます。スケジュールを引く際は、システム開発の期間だけでなく、この移行・合意形成の期間も余裕を持って確保しておくことが、計画通りに導入を進める上でのポイントです。
投資対効果をどう考えるか
Shopify B2Bへの投資対効果を考える際は、単純な「制作費用に対する売上増加額」だけでなく、削減できる業務コストも含めて総合的に評価することが重要です。たとえば、これまで営業担当者が電話やFAXの注文受付、見積書の作成に費やしていた時間が月間で数十時間規模あったとすれば、その時間をオンライン発注への切り替えによって別の付加価値業務(新規開拓や既存顧客のフォローアップなど)に振り向けられるようになります。また、請求書払いの督促業務が自動化されることによる経理担当者の工数削減効果も、見落とされがちですが確実に積み上がるメリットです。売上面の効果だけでなく、こうした間接的な業務効率化の効果も含めて投資判断を行うことで、より正確な投資対効果の見立てが可能になります。
BtoCとBtoBを併売する3つのパターン
Shopify B2Bを検討する際に、実務上もっとも悩ましいのが「今あるBtoC向けストアと、これから始めるBtoB取引をどう共存させるか」という設計判断です。ここでは代表的な3つのパターンを比較しながら、それぞれの向き不向きを整理します。
パターン1:同一ストアでB2B機能を有効化して併売する
既存のBtoC向けShopifyストアにB2B機能を追加で有効化し、1つのストア・1つの商品データベースの中でBtoCとBtoBの両方に対応する方法です。会社アカウントとしてログインした法人顧客には専用価格や専用カタログが表示され、一般の消費者にはこれまで通りの通常価格が表示されます。商品登録やページ更新の作業が一元化できるため、運用工数を抑えられるのが最大のメリットです。一方で、ストア全体のテーマデザインやチェックアウト導線をBtoCとBtoBの両方に配慮した形で設計する必要があり、既存ストアの構造によっては改修範囲が広くなることもあります。
パターン2:セカンドストア(別ストア)を構築して分離する
BtoC向けとBtoB向けで、まったく別のShopifyストアを新たに立ち上げる方法です。ドメインやテーマ、トップページの見せ方をBtoBの購買担当者に最適化した専用設計にできるため、UI・UXの自由度が高いのが特徴です。既存のBtoCストアには一切手を加えずに済むため、既存事業への影響を最小限に抑えながらBtoB展開をテストできる点も安心材料です。ただしその代わり、商品データやコンテンツを2つのストアで二重管理する手間が発生し、在庫連携のためのアプリ導入やAPI連携などの追加コストがかかる点は考慮が必要です。
自社に最適なBtoB展開の方法、一緒に整理しませんか
「同一ストアで併売すべきか、別ストアを立てるべきか」「どのプランを選べば必要な機能が揃うのか」——これらの判断は、事業フェーズや取引先の特性によって最適解が異なります。ec-retail-ads.comでは、EC制作からSEO・EC広告による集客、データ分析による改善まで、小売・EC事業者の「集める」「作る」「伸ばす」をトータルで支援しています。Shopify B2B導入の要件整理から実装、その後の運用改善まで、まずは無料相談で現状をお聞かせください。
パターン3:卸専用の別チャネル・別ドメインで運営する
パターン2に近い考え方ですが、Shopify自体を使わずに、卸売・法人向けの受発注だけを別の専用システム(受発注特化のクラウドサービスなど)で運用し、Shopifyストアとは疎結合で連携させる方法です。すでに社内で使い慣れた受発注システムがある場合や、BtoBの取引条件が非常に特殊で標準的なECカートの枠組みでは対応しきれない場合に検討される選択肢です。Shopify側の知見をそのまま活かしにくい分、システム間の連携設計や運用ルールの整備には相応の時間がかかります。
| パターン | メリット | デメリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 1. 同一ストアでB2B機能を有効化 | 運用が一元化できる/追加コストを抑えやすい | デザイン・導線設計の両立が必要 | BtoBの取引規模がまだ小さく、まずは低コストで試したい事業者 |
| 2. セカンドストアを構築 | BtoB専用のUI/UXを追求できる/既存ストアへの影響がない | データの二重管理・追加の連携コストが発生 | BtoBを本格的な事業の柱として育てたい事業者 |
| 3. 卸専用の別チャネルで運営 | 特殊な商習慣にも柔軟に対応できる | システム連携の構築負荷が大きい | 既に受発注システムを保有し、Shopifyとの連携のみを求める事業者 |
どのパターンが正解かは、現在の取引先数、想定するBtoB取引の規模、社内の運用体制によって変わります。特に「まずは小さく始めて検証したい」という段階であれば、パターン1(同一ストアでの併売)から着手し、取引が拡大したタイミングでパターン2への移行を検討するという段階的なアプローチが、投資リスクを抑えながら進める現実的な進め方です。
判断に迷ったときの考え方
3つのパターンのどれを選ぶべきか判断に迷う場合は、「今後1〜2年で、BtoB取引の売上構成比がどの程度になりそうか」という問いを立ててみるとよいでしょう。BtoB取引が全体の1〜2割程度にとどまる見込みであれば、まずは同一ストアでの併売で十分に対応できるケースがほとんどです。一方、BtoB取引が全体の売上の3〜4割、あるいはそれ以上を占めることが見込まれるのであれば、早い段階からBtoB専用のUI/UXに投資し、セカンドストアとして育てていく方が、長期的な取引先満足度と業務効率の両面で優位に働きます。また、既存のBtoCストアのブランドイメージと、BtoB取引先に見せたい「信頼感・実務効率重視」のトーンが大きく異なる場合も、ストアを分離した方がそれぞれの顧客体験を最適化しやすくなります。
Shopify B2B導入のメリット
Shopify B2Bを導入することで得られるメリットは、単に「BtoBに対応できる」という以上に、既存のBtoC事業にも波及する効果があります。ここでは代表的な3つの観点から整理します。
見積もり・請求業務のデジタル化による業務効率化
卸売・法人営業の現場では、いまだにFAXや電話、Excelでの見積書作成が根強く残っています。Shopify B2Bを導入すれば、取引先ごとの価格が自動的に適用された状態で発注が完結するため、営業担当者が都度見積もりを作成する手間が大幅に減ります。請求書払いへの対応や支払いリマインダーの自動送信も標準機能として組み込まれているため、経理・営業双方の事務作業の負荷軽減につながります。
大口顧客のLTV向上と関係性の強化
法人取引先はBtoCの個人顧客と比べて、一度取引が始まれば継続的かつ大口の発注につながりやすいという特性があります。過去注文からの再注文機能や、取引先専用のカタログ・価格表を用意することで、取引先にとっての利便性が高まり、他社への切り替えコスト(スイッチングコスト)を上げることができます。結果として、法人顧客一社あたりのLTV(顧客生涯価値)を高めることにつながります。
在庫・顧客データの一元管理によるガバナンス強化
BtoCとBtoBを別々のシステムで運用していると、在庫数の食い違いや顧客情報の二重管理といった問題が発生しがちです。同一ストア内でBtoBに対応する場合、在庫・商品マスタ・顧客データを一元的に管理できるため、こうしたリスクを構造的に減らすことができます。経営層にとっても、BtoCとBtoBを横断した売上・在庫状況をひとつの管理画面で把握できるメリットは小さくありません。
新規開拓のスケーラビリティが高まる
従来、卸売・法人営業の新規開拓は、展示会での名刺交換や飛び込み営業、既存取引先からの紹介といった、営業担当者の人的リソースに依存する部分が大きい活動でした。BtoB向けECサイトを整備し、そこにSEOやWeb広告による集客施策を組み合わせることで、営業担当者が個別にアプローチしなくても、検討段階の法人担当者が自らサイトを訪れ、会員登録から見積り依頼、初回発注までをオンラインで完結できるようになります。これは、限られた営業人員でも新規取引先の開拓件数を増やせるという意味で、事業のスケーラビリティに直結する効果です。
Shopify B2B導入時の注意点・落とし穴
メリットが大きい一方で、Shopify B2Bには実務上つまずきやすいポイントがいくつも存在します。導入を検討する前に、以下の注意点を必ず押さえておきましょう。
バリアント単位での価格設定に制約がある
Shopify B2Bの価格設定は基本的に商品単位(プロダクト単位)が中心であり、色やサイズといったバリアント単位できめ細かく法人向け価格を作り込みたい場合には、標準機能だけでは対応しきれないケースがあります。取り扱い商品のバリエーションが多い事業者ほど、この制約が運用上のボトルネックになりやすい点は事前に確認しておくべきです。
Plus未満のプランでは使えない機能がある
前述の通り、デポジット要件の設定や一部決済といった機能はPlusプラン限定です。「掛け売りの前に一定の内金を求めたい」「高額商品を分割決済で受け付けたい」といった商習慣がある場合、標準プランのままでは実現できず、後から上位プランへの移行やアプリでの補完が必要になることがあります。導入前に、自社の商習慣とプランの対応範囲を突き合わせておくことが重要です。
社内の営業・受発注プロセスとのギャップ
Shopify B2Bはあくまでツールであり、それを使う社内の営業プロセスや受発注フローが整理されていなければ効果は半減します。「取引先ごとの価格を誰がどう決めるのか」「与信管理はどう行うのか」「既存のFAX注文の顧客をどうオンラインに移行させるのか」といった業務設計は、システム導入と並行して社内で詰めておく必要があります。ツールを入れる前に、現行の業務フローの棚卸しから着手することをおすすめします。
アクセス権限とアカウント管理の設計
法人取引先には、発注担当者、承認者、経理担当者など、複数の関係者が一つの会社アカウントに紐づくケースが多くあります。誰がどこまでの権限(発注のみ、価格閲覧、請求書確認など)を持つのかを事前に設計しておかないと、運用開始後に「担当者が変わるたびにアカウント権限の調整で手間取る」「本来見せるべきでない価格情報が別の担当者にも見えてしまう」といったトラブルにつながりかねません。会社ごとのロケーション管理とあわせて、アカウントの権限設計も導入初期にしっかり詰めておくべき項目です。
地域・カタログ単位の設定は別途の検討が必要
Shopify B2Bと合わせてよく話題になるのが、Shopifyマーケット機能を使った地域別・カタログ別の価格出し分けです。海外の取引先や複数拠点に対して地域ごとに異なる商品ラインナップや価格を見せたい場合は、B2B機能とマーケットのカタログ機能を組み合わせて設定する必要があります。この地域・カタログ単位の具体的な設定手順については本記事の範囲を超えるため、詳しくは別記事のShopifyマーケットのカタログ機能とは?地域・B2B・小売の違いと設定手順を解説で詳細に解説していますので、あわせてご確認ください。
Shopify B2B機能以外の代替策
Shopify標準のB2B機能がすべての事業者にフィットするとは限りません。ここでは、標準機能だけに頼らずBtoB向けECを実現するための代表的な代替策を紹介します。
専用アプリでB2B機能を拡張する
Shopifyアプリストアには、B2B取引に特化した機能を追加できるアプリが数多く存在します。たとえば、卸価格を一般消費者とは別に表示するアプリ、ボリュームディスカウントや会員ランク別の価格設定を細かく作り込めるアプリ、法人限定の会員登録制商品ページを作れるアプリ、最低注文数量や決済方法・顧客タグ・注文金額に応じた複雑な注文制限を設定できるアプリなどが代表的です。これらは月額数千円〜2万円程度から利用でき、Shopify標準のB2B機能では物足りない部分をピンポイントで補完する手段として有効です。特にバリアント単位の価格設定や、複雑な注文制限ルールを実現したい場合は、こうした専用アプリの活用を積極的に検討する価値があります。
別ストアを構築するという選択肢
前章で触れたパターン2「セカンドストアの構築」も、広い意味ではShopify標準のB2B機能に頼らない代替策のひとつです。BtoB専用のストアをゼロから設計することで、Shopify B2Bの標準機能の枠を超えた、自社独自の受発注フローやUIを実現できます。初期構築コストはかかりますが、BtoB事業がすでに一定規模あり、今後さらに拡大させていく方針であれば、専用設計の方が長期的な投資対効果に優れることも少なくありません。
代替策の比較検討
| 選択肢 | 初期コスト | 柔軟性 | 運用の手間 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| Shopify B2B標準機能のみ | 低い | 標準機能の範囲内 | 少ない | BtoB取引がまだ小規模〜中規模の事業者 |
| 標準機能+専用アプリ | 中程度 | 高い(アプリ次第) | やや増える | 特定の機能(価格設定・注文制限等)を強化したい事業者 |
| セカンドストア構築 | 高い | 非常に高い | 多い(二重管理) | BtoBを本格的な事業の柱として育てたい事業者 |
| 専用受発注システム連携 | 高い | 非常に高い(特殊要件にも対応) | 多い(連携設計が必要) | 既存の受発注システムを活かしたい事業者 |
重要なのは「まず標準機能で始めて、足りない部分だけをアプリや別ストアで補完する」という段階的なアプローチです。最初から大掛かりな専用システムを構築するのではなく、Shopify B2Bの標準機能でスタートし、実際の取引データや顧客の声を踏まえながら拡張していく方が、投資リスクを抑えながら着実にBtoB事業を育てられます。
Shopify以外のプラットフォームという選択肢も
なお、視野を広げると、そもそもShopify以外のBtoB特化型受発注プラットフォームを新規に導入するという選択肢も存在します。ただし、既にBtoC向けにShopifyを運用している事業者にとっては、商品データや顧客データ、決済・配送の仕組みをすでに構築済みのShopifyエコシステムの中でBtoB対応を進める方が、開発コストと運用工数の両面で圧倒的に効率的です。よほど特殊な業界要件がない限り、まずはShopify B2B機能とその周辺エコシステム(専用アプリ・別ストア)の組み合わせで検討を進めることをおすすめします。
Shopify B2B導入までの進め方
実際にShopify B2Bを導入する際の標準的なステップを紹介します。自社で進める場合も、外部パートナーに依頼する場合も、以下の流れを押さえておくとスムーズです。
- 現状の卸売・法人取引の棚卸し:どの取引先に、どのような価格・条件で販売しているかを一覧化します。
- 要件定義:会社アカウントの管理方法、価格設定のルール、支払い条件、最小注文数量などのビジネスルールを整理します。
- プラン・実装方式の選定:標準機能で足りるか、専用アプリが必要か、別ストアが必要かを判断します。
- B2B機能の有効化・設定:Shopify管理画面で会社アカウント、価格表、支払い条件などを設定します。
- テーマ・導線の調整:法人向けのログイン導線や見積り依頼フォームなど、UI/UXを整えます。
- 既存取引先の移行:既存の卸売先に対して、オンライン発注への切り替えを案内し、初回発注をサポートします。
- 運用開始後のモニタリングと改善:発注データを分析し、価格設定や導線を継続的に改善します。
特に見落とされがちなのが、最後の「移行」と「運用開始後の改善」のステップです。システムを構築しただけでは、長年FAXや電話で発注してきた取引先がすぐにオンライン発注へ切り替えてくれるとは限りません。丁寧な説明資料の用意や、初回発注時のサポート体制を整えることが、Shopify B2B導入を「仏を作って魂を入れず」に終わらせないための鍵になります。
Shopify B2B導入を成功させるための視点
最後に、Shopify B2Bを単なる「機能追加」で終わらせず、事業成果につなげるための視点を整理します。
「集める」「作る」「伸ばす」を一体で考える
Shopify B2Bの導入は、システム構築というよりも事業戦略の一部です。BtoB向けの見込み顧客をどう「集める」か(SEOやWeb広告、展示会などのオフライン施策との連携)、実際にどう使いやすいストアを「作る」か、そして導入後のデータをどう分析し「伸ばす」かという、一連のプロセスとして捉えることが重要です。システムを入れて終わりではなく、継続的な改善サイクルを回せる体制を最初から意識しておくことで、投資対効果を最大化できます。
小さく始めて、データを見ながら拡張する
BtoBの商習慣は業界や取引先によって驚くほど多様です。最初からすべての要件を完璧に満たそうとすると、要件定義だけで長い時間がかかってしまいます。まずは主要な取引先数社を対象にShopify B2Bの標準機能で運用を始め、実際の発注データや取引先からのフィードバックを踏まえて、必要な機能を段階的に追加していくアプローチが、結果的にもっとも失敗の少ない進め方です。
Shopify B2B導入前に確認すべきチェックリスト
ここまで解説してきた内容を踏まえ、実際にShopify B2Bの導入を検討する際に、社内で確認しておきたい項目をチェックリスト形式で整理します。要件定義の初期段階で、このリストを関係者間で一つずつ確認しておくと、後工程での手戻りを大きく減らせます。
ビジネス要件に関するチェック項目
- 取引先ごとの価格差はどの程度か:商品単位の価格差で十分か、バリアント単位まで必要かを確認します。
- 最小注文数量・注文単位のルールはあるか:ケース単位・ロット単位など、業界特有の発注ルールを洗い出します。
- 支払い条件のパターンはいくつあるか:即時払い・請求書払い・分割決済など、取引先ごとに異なる条件を整理します。
- デポジット(内金)を求める商習慣があるか:ある場合はPlusプランの検討が必要になります。
- 海外取引先や複数通貨への対応が必要か:必要な場合はマーケット機能との連携を視野に入れます。
運用体制に関するチェック項目
- 会社アカウントの権限設計は誰が担当するか:発注担当者・承認者・経理担当者の権限範囲を決めておきます。
- 与信管理のルールは明文化されているか:請求書払いを許可する基準を事前に整理しておきます。
- 既存取引先への移行案内は誰がいつ行うか:移行スケジュールと担当者を明確にします。
- 導入後のデータ分析・改善は誰が担うか:継続的な改善を回せる体制を事前に確保しておきます。
これらの項目は、システムの技術的な設定以上に、導入の成否を左右する要素です。特に運用体制に関する項目は後回しにされがちですが、Shopify B2Bのようなツールは「入れて終わり」ではなく「入れてからどう運用するか」で成果が大きく変わるため、要件定義の段階から運用担当者を巻き込んでおくことを強くおすすめします。
よくある質問
Shopify B2Bの導入を検討する事業者からよく寄せられる質問を、実際の相談内容をもとにまとめました。
Shopify B2B機能はすべてのプランで無料で使えますか?
2026年4月以降、Shopify B2Bの基本機能(会社・ロケーション管理、数量ルール、数量別価格、支払い条件など)は、追加料金なしですべての料金プラン(Basic・Grow・Advanced・Plus)で利用できるようになりました。ただし、B2Bカタログの無制限割り当てやデポジット要件、一部決済といった一部の高度な機能は引き続きPlusプラン限定です。ご自身の契約プランで利用できる機能範囲は、Shopify公式サイトの最新のプラン比較ページで確認することをおすすめします。
既存のBtoC向けShopifyストアに、後からB2B機能を追加できますか?
はい、可能です。既存のストアの管理画面からB2B機能を有効化し、会社アカウントや価格表を設定することで、同一ストア内でBtoCとBtoBを併売する形にできます。ただし、既存のテーマやチェックアウト導線がBtoB向けの表示に対応しているかを確認し、必要に応じてテーマのカスタマイズを行う必要があります。
Shopify B2Bの導入設計、専門家と一緒に進めませんか
Shopify B2Bは強力な機能ですが、「どのパターンで併売するか」「どこまで標準機能で対応し、どこから専用アプリや別ストアで補完するか」という設計次第で、成果も運用負荷も大きく変わります。ec-retail-ads.comでは、EC制作・EC広告による集客・データ分析による改善まで、小売・EC事業者の「集める」「作る」「伸ばす」をワンストップで支援しています。BtoB展開の要件整理や実装、導入後の運用改善まで、無料相談で御社の状況をお聞かせください。
Shopify B2Bとアプリを使ったBtoB対応は、どちらを選べばよいですか?
取引先数が少なく、商習慣もシンプルな場合はShopify標準のB2B機能だけで十分対応できることが多いです。一方で、バリアント単位の価格設定や、顧客タグ・注文金額に応じた複雑な注文制限など、標準機能でカバーしきれない要件がある場合は、専用アプリでの補完を検討するとよいでしょう。まずは標準機能で始め、足りない部分だけをアプリで拡張していく段階的なアプローチをおすすめします。
BtoBの取引先が多い場合、別ストアを作った方がよいのでしょうか?
取引先数や取引規模、今後の事業戦略によって最適解は異なります。BtoB取引がまだ小規模であれば、同一ストアでの併売から始めるのが低コストで現実的です。一方、BtoBを事業の主力として本格的に育てていく方針であれば、専用のUI/UXを追求できるセカンドストアの構築を検討する価値があります。判断に迷う場合は、現状の取引先データをもとに専門家に相談することをおすすめします。
請求書払い(掛け売り)に対応する際、与信管理はどうすればよいですか?
Shopify B2Bの標準機能には、取引先ごとに支払い条件を個別設定する仕組みはありますが、与信審査そのものを自動化する機能は含まれていません。新規取引先については、社内の与信管理ルール(取引実績や信用調査会社の情報などをもとにした与信枠の設定)に基づいて、請求書払いを許可するかどうかを判断するプロセスを、システム導入とあわせて整備することをおすすめします。
海外の法人取引先にも同じ仕組みで対応できますか?
Shopify B2Bの会社・価格管理の仕組み自体は海外の取引先にも適用できますが、通貨や税制、地域ごとのカタログ出し分けについては、Shopifyマーケット機能と組み合わせた設定が必要になります。地域・カタログ単位の具体的な設定方法は、前述の別記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
Shopify B2Bの導入は自社の担当者だけで進められますか?
標準機能の基本設定(会社アカウントの作成や価格表の登録など)自体は、Shopify管理画面の操作に慣れていれば自社担当者でも進められます。一方で、BtoB専用の導線設計やテーマのカスタマイズ、専用アプリとの連携、既存の卸売先企業への移行対応などを含めると、EC構築の知見を持つ制作パートナーと二人三脚で進めた方が、手戻りを減らしつつ短期間で着地させやすいのが実情です。特に社内にShopify運用の専任者がいない場合は、要件定義の段階から専門家に相談することをおすすめします。
Shopify B2B導入後、どのような指標で効果を測ればよいですか?
代表的な指標としては、オンライン発注に切り替わった取引先の割合、取引先あたりの平均発注額・発注頻度、再注文機能の利用率、請求書払いにおける支払い遅延率などが挙げられます。加えて、新規の法人取引先獲得数や、その獲得チャネル(SEO経由・広告経由・紹介経由など)を継続的にモニタリングすることで、BtoB向けECが新規開拓のチャネルとしてどれだけ機能しているかを定量的に把握できます。導入前にこれらの指標のベースラインを取っておくと、施策の効果検証がしやすくなります。
既存のFAX・電話注文の取引先を、無理にオンラインへ移行させる必要はありますか?
必ずしも全ての取引先を一斉にオンライン発注へ切り替える必要はありません。長年FAXや電話での発注に慣れている取引先も一定数存在するため、実務上は「オンライン発注を基本としつつ、従来の方法も並行して受け付ける」という移行期間を設けるのが現実的です。オンライン発注のメリット(24時間発注可能、価格の見える化、再注文の手軽さなど)を丁寧に伝えながら、取引先ごとのペースに合わせて段階的に移行を進めていくことで、無理なくオンライン化の比率を高めていくことができます。
まとめ
Shopify B2Bは、2026年4月の全プラン開放によって、中堅・中小規模の小売事業者にとっても現実的な選択肢となったBtoB向けEC機能です。会社・ロケーション単位の顧客管理、取引先ごとの個別価格、数量ルール、請求書払いといった、BtoB取引に不可欠な機能があらかじめ標準で用意されている点は大きな魅力です。一方で、バリアント単位の価格設定ができない、Plus未満では使えない機能があるといった制約も存在するため、自社の商習慣とプランの対応範囲を照らし合わせた上での導入判断が欠かせません。
BtoCとBtoBの併売にあたっては、同一ストアでの運用、セカンドストアの構築、専用受発注システムとの連携という複数の選択肢があり、取引規模や今後の事業戦略によって最適な形は変わります。まずは標準機能で小さく始め、実際の運用データを見ながら専用アプリや別ストアでの拡張を検討していく段階的なアプローチが、投資リスクを抑えながら着実にBtoB事業を育てる近道です。自社だけで判断が難しい場合は、EC制作・EC広告の専門家に相談しながら、自社に最適な設計を見極めていくことをおすすめします。
また、Shopify B2Bの導入はシステム構築だけで完結するものではなく、既存取引先への移行案内、社内の与信管理ルールの整備、そして導入後にオンライン発注へどう誘導していくかという継続的な運用改善までを含めて、初めて成果につながるプロジェクトです。「何ができるか」を理解することと同じくらい、「導入後にどう運用し、どう育てていくか」を事前に描いておくことが、Shopify B2Bを単なる機能追加で終わらせず、事業の新たな成長エンジンに変えるための最も重要なポイントだと言えるでしょう。
今回解説した内容を振り返りながら、まずは自社の卸売・法人取引の現状を棚卸しし、「同一ストアでの併売」「セカンドストアの構築」「専用受発注システムとの連携」のどのアプローチが最も自社にフィットするのかを整理するところから始めてみてください。その上で、必要に応じてプランの見直しや専用アプリの導入を検討し、Shopify B2Bという強力な土台を、自社ならではのBtoBビジネスへと育てていきましょう。

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