「海外からも注文は入るけれど、危険物扱いになるスプレー缶や、輸出規制のある食品だけは海外発送を止めたい…」「割れ物や精密機器は国内発送のみにしたいけれど、そのためだけに有料の購入制限アプリを契約するのはコストがもったいない…」「実店舗で扱っている商品の一部だけを国外発送不可にしたいのに、Shopifyの標準機能でできるのか分からない…」。越境ECにも対応しながら実店舗を運営している事業者の方から、こうした「商品ごとに配送可能エリアを分けたい」というご相談を数多くいただきます。
結論から言うと、Shopifyには「配送プロファイル(Shipping Profile)」という標準機能があり、これを使えば追加アプリを一切導入せずに、特定商品だけを国内発送限定にすることが可能です。月額費用も発生しないため、コストを抑えたい小売事業者にとって非常に有効な選択肢です。本記事では、配送プロファイルを使って一部商品のみ国外発送不可にする設定手順を、実務上の注意点やよくある失敗例も交えて徹底解説します。
この記事でわかること
- Shopify標準機能の「配送プロファイル」でできること・できないこと
- 一部商品のみを国外発送不可にする具体的な設定手順
- 購入制限アプリを使う方法との違いとメリット・デメリット
- 危険物・規制品・重量物など、国内発送限定にすべき商品の実例
- 設定後に必ず行うべき動作確認の方法
- よくある設定ミス・トラブルシューティング
一部商品のみ国外発送不可にする方法とは
Shopifyの「設定>配送と配達」には、「配送プロファイル」という機能があります。通常、多くのストアはデフォルトの配送プロファイル(全商品共通)のみを使っていますが、実はこの配送プロファイルは商品単位で複数作成でき、それぞれに異なる配送可能エリアを設定できるという仕様になっています。
この仕組みを利用し、「国内発送のみに限定したい商品」だけを対象にしたカスタム配送プロファイルを新規作成し、配送エリアを「日本のみ」に設定することで、対象商品がカートに入っている場合、海外住所でのチェックアウト時に配送方法が表示されなくなり、実質的に購入不可(決済に進めない状態)にできます。
購入制限アプリとの違い
「特定商品を購入できないようにする」という目的だけを見ると、購入制限系アプリ(個数制限アプリや会員限定アプリなど)でも実現できそうに思えますが、配送プロファイルを使う方法にはアプリにはない特有のメリットがあります。
- 追加費用が一切かからない:Shopify標準機能のため、月額利用料が発生しない
- アプリの追加によるサイト表示速度への影響がない:スクリプトの追加読み込みが発生しないため、ページ表示速度を落とさない
- 「地域単位」での制御に特化している:個数ではなく配送先住所(国・地域)を条件にした制御に最適化されている
- チェックアウトの標準フローの中で自然に制御される:カート追加はできても配送先入力時に発送方法が表示されなくなるため、Shopify標準のチェックアウト体験を崩さない
一方で、「個数を制限したい」「会員ランクによって購入可否を変えたい」といった、地域以外の条件で制御したい場合は、配送プロファイルでは対応できず、専用の購入制限アプリが必要になります。目的に応じて使い分ける、あるいは併用することが重要です。
設定手順:カスタム配送プロファイルの作成
実際の設定は以下の2ステップで完了します。特別なコーディング知識は不要で、Shopify管理画面の操作だけで完結します。
ステップ1:国内発送のみのカスタム配送プロファイルを作成する
- Shopify管理画面から「設定>配送と配達」にアクセスする
- 「配送」セクションの下部にある「カスタムプロファイルを作成する」をクリックする
- プロファイル名を入力する(例:「国内限定発送商品」など、社内で分かりやすい名称にする)
- 「商品を追加」から、国外発送を不可にしたい対象商品を選択する(複数選択可)
- 配送エリアの設定で、既存のエリアを削除し、新たに「日本」のみを配送可能エリアとして追加する
- 配送料金(送料無料・定額・実費計算など)を任意で設定する
- 「保存」をクリックして完了
ここで重要なのは、この配送プロファイルに追加した商品は、自動的にデフォルトの配送プロファイル(全世界対応)から除外されるという点です。同じ商品が2つのプロファイルに重複して存在することはできない仕様になっているため、対象商品の設定漏れや、逆に対象外の商品を誤って含めてしまうミスがないよう、商品追加時は商品名を一つずつ確認しながら進めることをおすすめします。
ステップ2:動作テストを行う
設定後は必ず本番環境で以下の動作確認を行ってください。
- 対象商品をカートに追加し、チェックアウトへ進む
- 配送先住所に海外住所(例:アメリカやシンガポールの住所)を入力する
- 配送方法の選択画面で「利用可能な配送方法がありません」といった趣旨のメッセージが表示されることを確認する
- 同じ手順で日本国内の住所を入力し、通常通り配送方法が選択でき、決済まで進めることを確認する
- 対象商品と対象外の商品を同時にカートに入れた場合の挙動も確認する(この場合、配送プロファイルが分かれるため、配送方法の選択画面で商品ごとに配送方法を個別に選ぶ表示になります)
特に最後の「対象商品と対象外商品を同時購入する場合」の挙動は見落とされがちです。海外のお客様が対象商品と通常商品を同じカートに入れた場合、通常商品側の配送方法だけは選択できてしまうため、「なぜこの商品だけ配送できないのか」が伝わりにくいという課題があります。次章で、この点への実務上の対処法を解説します。
配送プロファイル方式のメリット
- Shopify標準機能のみで完結するため、月額コストが一切かからない
- 設定完了までの作業時間が短く(5〜10分程度)、専門知識がなくても対応可能
- アプリを追加しないため、ストアの表示速度やテーマとの相性トラブルのリスクがない
- Shopify標準のチェックアウトフローの中で完結するため、決済体験の一貫性が保たれる
- 配送料金設定も同時に行えるため、「国内は送料無料、この商品だけは送料実費」といった細かい配送ポリシーの管理と一体化できる
配送プロファイル方式のデメリット・注意点
- 海外のお客様に対して「なぜ購入できないのか」の理由が伝わりにくい(配送方法が単純に表示されなくなるだけで、明確な理由メッセージは表示されない)
- 個数制限や会員ランク別制御など、地域以外の条件には対応できない
- 配送プロファイルは商品ごとに1つしか設定できないため、同じ商品を「一部の国だけ発送不可(全面禁止ではなく一部除外)」のように細かく制御したい場合、エリア設定の組み合わせが複雑になりやすい
- 商品数が多いストアでは、対象商品の追加・除外を手作業で管理する必要があり、商品追加のたびに配送プロファイルへの登録を忘れるリスクがある
- 複数拠点・複数倉庫からの出荷を行っているストアでは、出荷地(Origin)ごとに配送プロファイルの設計が複雑になるため、既存の配送設計への影響を事前に確認する必要がある
配送プロファイル vs 購入制限アプリ 比較表
| 比較項目 | 配送プロファイル(標準機能) | 購入制限アプリ |
|---|---|---|
| 追加費用 | 無料 | 月額数千円〜(プランによる) |
| 制御できる条件 | 配送先の国・地域 | 個数、会員ランク、顧客タグ、期間など多様 |
| 設定の手間 | 少ない(管理画面操作のみ) | アプリ導入・テーマ拡張設定が必要 |
| 理由メッセージの表示 | 基本的に表示されない(配送方法が単に非表示になる) | アプリによってはカスタムメッセージを表示可能 |
| サイト表示速度への影響 | なし | アプリのスクリプト読み込み分、わずかに影響する可能性 |
| 向いている用途 | 危険物・規制品・重量物など地域限定発送 | 数量限定販売、転売対策、会員限定販売など |
国内発送限定にすべき商品の実例
実店舗を持つ小売事業者が配送プロファイルによる国外発送制限を活用する代表的な商品カテゴリは以下の通りです。
- 危険物・航空輸送規制品:スプレー缶、香水(アルコール度数が高いもの)、リチウム電池内蔵の家電など、国際輸送時に航空法や各国の危険物規制に抵触する可能性がある商品
- 食品・化粧品の輸出規制対象品:生鮮食品、一部の医薬部外品、動植物由来原料を含む商品など、輸出入時に検疫・許認可が必要な商品
- 大型・重量物:家具、大型家電など、国際配送のコストが著しく高くなり実質的に採算が合わない商品
- 知的財産・商標の関係で特定地域販売が制限されている商品:ライセンス契約上、販売地域が国内に限定されているブランド商品
- 実店舗限定の受け取り前提商品:オーダーメイド品や店舗での採寸が必要な商品など、配送自体を前提としていない商品
こんな事業者におすすめ/向いていないケース
おすすめのケース
- 越境ECにも対応しているが、一部の商品だけは輸出規制や採算面から国内限定にしたい事業者
- 追加アプリのコストをかけずに、Shopify標準機能だけで運用を完結させたい事業者
- 対象商品数がそれほど多くなく、手作業でのプロファイル管理が現実的な規模の事業者
向いていないケース
- 「なぜ購入できないか」を海外顧客に明確なメッセージで伝えたい事業者(この場合は購入制限アプリの併用を検討)
- 対象商品が数百点規模におよび、商品追加のたびに手作業でプロファイル登録するのが現実的でない事業者(この場合は在庫管理システムやカスタムアプリとの連携も検討要)
- 地域制限に加えて個数制限や会員ランク別制御も同時に必要な事業者(配送プロファイルと購入制限アプリの併用が必要)
小売事業者向けの実務Tips
Tips1:商品説明文にも国内限定発送の旨を明記する
配送プロファイルによる制御は「チェックアウト時に配送方法が表示されなくなる」という仕組みのため、海外の顧客が事前にその商品が購入できないと気づかないままカートに入れ、チェックアウトで初めて気づいて離脱するケースがあります。商品ページの説明文に「この商品は日本国内のみへの発送となります」と明記しておくことで、無用な離脱やクレームを防げます。
Tips2:新商品追加時のチェックリストに配送プロファイル確認を組み込む
危険物・規制品を扱う事業者は、新商品登録の運用フローに「配送プロファイルへの登録要否確認」を必須項目として組み込んでおくことをおすすめします。属人的な判断に任せると、担当者の交代時などに設定漏れが発生しやすくなります。
Tips3:配送業者側の規制情報も定期的に確認する
国際配送を委託している配送業者(国際宅配便事業者や郵便事業者)の禁制品・規制品リストは、法改正や情勢の変化により随時更新されます。Shopify側の設定だけでなく、配送業者側の最新の規制情報も定期的に確認し、必要に応じて配送プロファイルの対象商品を見直す運用体制を整えておきましょう。
Tips4:カスタマーサポート向けのFAQを用意しておく
「なぜこの商品だけ海外に送ってもらえないのか」という問い合わせは一定数発生します。カスタマーサポート担当者が即座に回答できるよう、対象商品と制限理由(危険物規制のため、輸出許認可が必要なためなど)を一覧にした社内向けFAQを整備しておくと、対応品質のばらつきを防げます。
よくある質問(FAQ)
Q. 配送プロファイルは商品ごとにいくつでも作成できますか?
A. Shopifyのプランによって作成可能な配送プロファイルの上限数は異なります。1つの商品は1つの配送プロファイルにのみ所属できる仕様のため、細かく分類したい場合は「国内限定発送グループ」「一部地域除外グループ」のように目的別にプロファイルを整理して設計することをおすすめします。
Q. 海外のお客様には「購入できません」という明確なメッセージは表示されますか?
A. 標準の挙動では、配送方法の選択肢自体が表示されなくなる(または「利用可能な配送方法がありません」という一般的な文言が表示される)形になり、商品名を明示した詳細な理由メッセージは表示されません。理由を明確に伝えたい場合は、商品ページへの注記や、購入制限アプリのアラートメッセージ機能の併用を検討してください。
Q. 一部の国だけ除外し、それ以外の海外へは発送したい場合も設定できますか?
A. 配送エリアの設定では国・地域を個別に選択できるため、「日本以外のアジア地域はOK、それ以外は不可」といった細かいエリア設計も可能です。ただし対象国が多くなるほど設定項目が増え、管理が煩雑になるため、除外したい国・地域が少数であればそれらのみを除外する設計にする方が運用しやすい場合もあります。
Q. 既存のデフォルト配送プロファイルの送料設定に影響はありますか?
A. カスタム配送プロファイルに商品を追加すると、その商品はデフォルトプロファイルから自動的に除外されるため、デフォルトプロファイル側の送料設定自体には影響しません。ただし、対象商品に適用したい送料をカスタムプロファイル側でも別途正しく設定する必要があるため、送料無料ラインなどの条件を設けている場合は、両プロファイルの整合性を確認してください。
Q. 設定後にアクセス数の多い時間帯でも正しく機能しているか不安です。監視する方法はありますか?
A. Shopify標準機能には配送プロファイルの適用状況を専用に監視するダッシュボードはありません。定期的に手動でテスト購入を行うか、対象商品の注文データを抽出して配送先国を確認するなど、運用でのチェック体制を整えることをおすすめします。
まとめ
一部商品のみを国外発送不可にする対応は、Shopify標準機能の「配送プロファイル」を使えば、追加アプリのコストをかけずに実現できます。危険物や輸出規制品、重量物など、地域単位で発送を制御したい商品を扱う小売事業者にとっては非常に有効な方法です。一方で、理由メッセージの表示や個数制限といった地域以外の条件での制御が必要な場合は、購入制限アプリとの併用も視野に入れる必要があります。自社の商品構成や越境EC戦略に応じて、標準機能とアプリを適切に使い分けることが、無駄なコストをかけずに運用品質を高めるポイントです。
実際にどの施策が自社に最適なのかは、商材特性や競合状況、社内の体制まで踏まえて総合的に判断する必要があり、自己判断だけでは見誤ってしまうことも少なくありません。迷った際は、EC構築と集客の両面を見渡せる専門家に一度相談し、客観的な視点で自社に合った進め方を整理してもらうことをおすすめします。

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